2020年3月25日
精神科病院指導監査結果に係る公文書開示請求結果について
心の旅の会 市民精神医療研究所
会員 寺澤 暢紘
1
精神科病院への指導監査は、厚生労働省が精神保健福祉法関係行政事務指導監査とし
て、「精神科病院に対する指導監査の徹底について」等の通知を都道府県に示し、都道
府県はこれに従って毎年度監査を行っています。
≪ 目次 ≫
2 公文書開示請求の状況について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P2
(1)開示請求をした公文書の名称
(2)開示決定結果について
(3)公開日
3 開示内容について
(1)調査項目について
①調査項目について
②全体の開示結果について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P3
ア 行動制限
イ 面会、信書、電話
ウ 金銭管理
(2)項目別の状況について
①病院概要
②
病床及び入院患者の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P4
③
従業員の配置状況及び勤務体制
④
医療環境
⑤
入院患者の処遇
⑥
診療報酬点数に基づく精神科作業療法の実施状況
⑦
病院・病棟等整備
⑧
自立支援医療及び精神障害者福祉手帳の状況
⑨
医療保護入院者退院支援委員会の開催状況
4 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P5
2 公文書開示請求の状況について
静岡県及び静岡市並びに浜松市に対して、情報公開制度に基づき公文書開示請求を行いました。
(1)開示請求をした公文書の名称
過去3年間(28,29,30年度)の精神科病院に対する指導監査に係る、1 実施状況、2 実施結果、3 改善結果、4 指導監査に伴う調査表について
(2)開示決定結果について
静岡県、静岡市、浜松市とも一部開示決定となり、非開示根拠は以下の通り。
①
静岡県
静岡県情報公開条例 第7条第2項、第3項、第6項
②
静岡市
静岡市情報公開条例 第7条第1項、第2項
③
浜松市
浜松市情報公開条例 第7条第3項
(3)公開日
① 静岡県 2019年12月17日(火)
②
静岡市 2020年 1月28日(火)
③
浜松市 2019年12月 9日(月)
3 開示内容について
(1)調査項目について
の中で、「適正な精神医療の確保等について」、「行動制限、面会、信書、電話、金銭管
理等にかかる処遇」について、各都道府県に「指導の徹底」を求めています。
さらに、「四 実地指導の指導項目について」において、「左記の項目について十分留意し実施すること。」とされていることから、都道府県では各病院に対してほぼ同様の項目に従って監査が行われています。
今回の結果では、静岡県では「喫煙室の状況」が、静岡市、浜松市では「自立支援医
療及び精神障害者手帳の状況」が、浜松市では「医療保護入院患者の退院支援委員会開
催状況」がそれぞれ追加されていました。
①調査項目について
1 病院概要、2 病床及び入院患者の状況、3 従業員の配置状況及び勤務体制等、4 医療環境、5 入院患者の通信・面会、6 入院患者の処遇、7 診療報酬点数に基づく精神科作業療法の実施状況、8 診療報酬に基づく精神科作業療法以外、9 入院患者の事故、10 防災管理、11 苦情処理状況、12 職員の研修体制、13 病院、病棟等整備、14 精神保健福祉法運上の問題、15 前回監査指摘事項の改善状況、喫煙室の状況(静岡県)、自立支援医療及び精神障害者手帳(静岡市、浜松市)、医療保護入院患者の退院支援委員会開催状況(浜松市)
②全体の開示結果について
非開示率は静岡県が56.9%、静岡市が42.9%、浜松市が47.9%でした。調査項目の総数650項目に対して、約半数の49.4%の321項目が非開示でした。
なお、全項目を非開示にした項目は、9 入院患者の事故、11 苦情処理状況、14 精神保健福祉法運用上の問題、15 前回監査指摘事項の改善状況の4項目でした。
また、項目全体を開示した項目は、5 入院患者の通信、面会、10 防災管理、12 職員の研修体制の3項目と、静岡県独自の「喫煙室の状況」のみでした。
そして、厚生労働省の通知で重点項目とされている行動制限、面会、信書、電話、金銭管理における結果は以下の通りです。
この内、行動制限に関わる項目の「入院患者の処遇」について、県は57.4%、静岡市は57.1%、浜松市は26.3%が非開示でした。(資料2参照)
ア 行動制限
入院患者の処遇の項目の中に、(1)任意入院患者の開放処遇の制限及び、(2)入院患者の行動制限の項目があり、「12時間以上の隔離を実施した事例
数」「身体拘束をした事例数」「信書の発受の制限をした事例」「面会の制限
を実施した事例」「通信の制限を実施した事例」の事例数が求められています。
これについては、静岡県、静岡市、浜松市とも非開示でした。
イ 面会、信書、電話
これに関しては、①面会時間、②面会規制、③面会室、⓸閉鎖病棟への電話機の設置の項目があり、静岡県、静岡市、浜松市とも開示しています。
ウ 金銭管理
このうち、入院患者預り金については、静岡県及び静岡市は全面非開示、浜松市は2項目が非開示でした。また、入院費以外の徴収金は静岡県、静岡市、浜松市とも開示しました。
(2)
項目別の状況について
①
病院概要
浜松市は全項目を開示していますが、静岡県、静岡市は事務長名を非開示にしています。
② 病床及び入院患者の状況
病院の総病床数は開示されましたが、入院者の状況に関わる病床利用率、平均在
院日数、措置入院の状況は非開示でした。
③ 従業員の配置状況及び勤務体制
個人名については院長及び常勤医は開示されましたが、その他非常勤、各専門職
は全て非開示でした。また、職員数は常勤医師数は開示されましたが、その他の職
種の常勤、非常勤職員数は非開示でした。浜松市は医師のみでなく作業療法士、精神保健福祉士、臨床心理士の数を開示しています。
④ 医療環境
ア 病室・寝具等の清潔
病室、寝具、衣類について、清掃及び交換日及び実施者(職員、業者)の状況について静岡県及び静岡市は非開示で、浜松市は実施者の項目が非開示でした。
その他の冷暖房の設備、入浴状況、食事の項目は何れも開示でした。
⑤ 入院患者の処遇
前記3の(1)の②のアの行動制限を除いた項目について報告します。
ア 入院患者の処遇に関する文書の存在については何れも開示。
イ 行動制限最小化委員会の状況については、静岡県は開催の状況は開示し、設
置年月日及び現在の委員構成は非開示。浜松市は精神科医名、設置年月日、開
催の状況は開示。(行動制限の妥当性の検討、情報収集等の取り組み)
ウ 事後審査委員会の状況(応急入院指定病院のみ)では静岡県は全面非開示。
浜松市は設置年月日、精神科医名、職種、開催の状況は開示。
エ 特例医師による特例措置の状況について、静岡県は非開示、浜松市は開示。
なお、静岡市はこの項目を含め前記ア、イ、ウの項目はありませんでした。
カ 作業などの収益金
静岡県、静岡市は非開示。浜松市は不明。
⑥ 診療報酬点数に基づく精神科作業療法の実施状況
静岡県は1回の参加者数、企画者、従事者は非開示。静岡市、浜松市は企画
者、従事者が非開示。
⑦ 病院・病棟等整備
静岡県は非開示。静岡市、浜松市は開示。
⑧ 自立支援医療及び精神障害者福祉手帳の状況
静岡市及び浜松市が項目に設定しています。浜松市は開示、静岡市は件数を
非開示。
⑨
医療保護入院者退院支援委員会の開催状況
浜松市独自の項目ですが非開示でした。
4 まとめ
日本の法律で疾患に係る法律は、「結核予防法」と「精神保健福祉法」が現存し、「ら
い予防法」は隔離政策の誤りが批判され1996年に廃止されています。結核予防法及び
らい予防法は伝染病予防の観点により作成された法律です。
しかし、精神保健福祉法の対象である精神疾患は明らかに伝染病ではありませんが、伝染病と同様の観点で、明治時代以来隔離政策の一環として法律が作成されてきた歴史があります。
精神保健福祉法は、これまで戦前の精神病者監護法、精神病院法、戦後になって精神衛生法、精神保健法、そして現在の精神保健福祉法と改正されてきた歴史があります。
特に1987年の精神保健法改正は精神病院の看護助手による、入院患者への暴力事件がきっかけで、国際的にも日本の精神病院の人権侵害が指摘されました。以後、多数の精神病院の不祥事が発覚し、現行の精神保健福祉法では、入院患者の人権問題が中心になり改正された経過があります。
こうした背景もあり「人権に配慮した」、精神科病院の指導監査の徹底が求められているものと考えます。
1 人権にかかわる行動制限、入院患者の事故、苦情処理の状況は非開示でした。
2 精神保健福祉法上、通信・面会については「原則として自由に行われることが必要
である。」とされていますが、県内38病院の内21病院(55%)で何らかの規制が行
われています。
面会時間については、早朝8時20分から夜間20時まで幅広く設けられています。
病院ごとでは、午前中だけ、午後から、昼休みを挟んで午前から午後までというよう
に何らかの理由で時間帯が設定されています。
ただ、面会場所については、ほとんどが独立した面会室で行われているようですが、
中には病棟内のコーナーでの面会もあるようです。(静岡県2表3、静岡市1表6、
浜松市1表4)
3 閉鎖病棟に電話設置が設置され、その利用状況は、カード、硬貨のいずれかの使用
が可能となっています。しかし、カード及び硬貨は自己管理なのか、或いは使用時間
の制限の有無等については不明です。電話機の設置の状況を監査する状態では、携帯
電話保有の有無については監査項目になっていません。(静岡県2表4)
4 医療環境の項目では、洗濯・冷暖房設備、入浴状況、食事の状況について開示され
ました。このうち入浴状況及び食事に関しての開示内容を説明します。
入浴については、夏季、冬季通じで週2回から週7回まで利用可能とされていま
す。また、シャワーについては、週1回から週7日までと、希望・必要に応じての利
用が可能となっています。(静岡県3表5、静岡市1表3、浜松市1表2)
食事は、朝食は6時45分から小刻みに設定され最も遅い時刻は8時となっています。昼食は11時15分から12時の間で設定されており、夕食は5時45分から7時までの時刻で開始されています。(静岡県2表2、静岡市2表8、浜松市1表3)
5 入院患者の処遇の項目の中の、入院患者の預り金については、静岡県及び静岡市は
非開示でしたが、浜松市は開示されました。
また、入院費以外の徴収金については、静岡県、静岡市、浜松市の何れも開示され
ました。特徴的には入院者の小遣い金を病院側が管理する場合が多く、その預り金管
理料として、日額100円から150円までの徴収の状況があります。さらには私物管
理代行、貴重品管理料、買い物代行など精神科病院ならではの代行料が徴収金として発生しています。(静岡県1表1、静岡市1表4、浜松市2表6)
6 今回の公文書開示請求は、会員家族が入院中に納得のできない身体拘束が行われ
たことから、県内全精神科病院34か所にアンケートを行いましたが、実情がほとん
ど把握できなかったことに端を発しています。
アンケートに答えていただいた病院は4病院だけでした。回答のない病院には電
話で改めてアンケートの協力をおねがいしましたが、必ずしも丁寧な対応ではあり
ませんでした。いわく「行政、行政関連以外は辞退」「たくさんアンケートがあるの
で」「事務長不在で分からない」等の電話対応でした。
私達の会は精神病を抱えている人もそうでない人も、精神病や精神病院に関心の
ある人たちのささやかな集まりです。毎月1回の定例会では心の病を抱える当事者
の人たちの、病気、障害により周囲との生きにくさや、日ごろの悩みを話し合うこと
が中心になっています。
こうした定例会で身体拘束をされ、家族として主治医に説明を求めても、納得でき
る説明は聞けず、その後まもなく退院になってしまったとの報告がありました。
そのことをきっかけに行った身体拘束についてのアンケート調査は、精神科病院
の閉鎖的な体質を改めて感じさせるものでした。
そこで、精神科病院が安心して治療が受けられる状況にあるのか、毎年行われてい
る精神科病院の監査について、公文書開示請求を行ったものです。
今回の結果から、心の病を抱える当事者はもちろん、これから治療を受けるであろ
う市民の立場から検証する必要があると思います。
精神保健福祉法に規定されて運営されている精神科病院である筈ですが、時折ニ
ュースになる精神病院の不祥事や、病院職員による違法行為は、安心して治療が受け
られない精神医療の一面だと思います。誰もが安心して受けられる精神医療である
ための、精神科病院監査であってほしいと願うものですが、今回の監査結果の開示状況は納得のいくものではありませんでした。
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